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お客様インタビュー#1「乗りつづける理由」メルセデス・ベンツS600L(W140)

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お世話になっているお客様へのインタビューをさせていただきました。

お伺いするお話のテーマは「乗りつづける理由」です。

 

どのように愛車と向き合い、どんな付き合い方をされているのか。

そのクルマの魅力とは何か?

この部分にクローズアップしてお話を伺わせていただきました。

 

今回は、平成8年式 メルセデス・ベンツS600L(W140)

にお乗りのお客様へインタビューをさせていただき、貴重なお話をお伺いすることができました。

ご協力ありがとうございました!

 

 

Q1. W140 S600Lとは、どんなおクルマでしょうか?
 

この世にこんな車が存在したのかと衝撃を受けました。

 

大型金庫の開閉を連想させる“調律”された金属質な音を出して開閉できるドア、ドアを閉めると訪れる静寂、セルを回すと短くも強い音が聞こえ、“火が入って”一唸りして回り始めるM120エンジン。いざ走り始めると、走り始めたその瞬間に音という音が聞こえないのに気づかされ、段差を通過すればウルトラフラットとでも形容すべき乗り心地とミシリとも言わない剛性感、国産車では到底感じることのできない“走る・曲がる・止まる”という、車に求められる基本的性能の高さを感じます。

 

ネオクラシック・メルセデス世代共通の重たいオルガンペダルは“走ることを拒む”と言われるほど重く、乗り始めた直後は右足が攣るかと思いました(笑)しかし、この重たいオルガンペダルは後席に重要な客人を乗せることが前提の140では、滑らかに走り出し、氷上を滑走するかのような走りをするのに不可欠です。一般道では重たいだけのオルガンペダルも、高速走行時は微妙なスロットル調整が楽であり、一定速度で長時間・長距離走行するのが非常に楽です。

 

ブレーキで一番最初に感じたのは“止まらない”ということです。車重が重いが故かと思いきや、踏んだら踏んだだけ効く(踏み込んだだけ効く)ブレーキであり、滑らかに“滑走”後に音もなく止めることができます。

 

140の600と言えば、やはりV12エンジンが最大の特徴でしょう。“火が入った”後のV12はタコメーターを見て初めて、回っていたことに気づきます。低回転域でも2トン超の巨体を悠々と走らせるだけのトルクを有し、現代のトレンドであるダウンサイジングエンジンとは異なる感触を味わえます。普段は黒子に徹するV12も、重たいオルガンペダルを踏みこんでやると運転者の感性に訴えかける官能的な“協奏曲”を奏ででくれます。1600~1900回転では“ドロロロロッ”という水平対向エンジンを想像させる重低音、2000回転以上は“ヴァーンッ”という心地よい快音を発します。

 

私の実家は埼玉県南部の某市にあり、盆暮れ正月+GWは例外なく140で移動します。現勤務地の長崎県から実家まで約1,300km、時間にして15~18時間をこのクルマで過ごします。しかしそこは140、長時間・長距離走行はドイツ車の得意とするところであり、実際に疲労は最小限に抑えられています。私がまだ若いこともあるのでしょうが(笑)

 

ネオクラシック・メルセデス世代共通の“立つように座る”シートは疲労蓄積が最小限に局限される設計となっており、特に下半身の疲労蓄積防止という点で優秀です。私は20代前半に急性腰痛症を患って以来、自分の腰がシートの判断基準となっているのですが、140に乗り始めてからというものの腰痛は起きていません。それどころか、疲れ切っている時に140に乗ると、蓄積された疲労がじわっと解消されていくようで、次第に眠くなります(笑)

 

疲労蓄積防止という点では恐ろしいまでの静粛性も一役買っています。セルシオやセンチュリー等、静粛性に優れるクルマは他にもありますが、140はそれらのクルマと比較しますと、実は音が入ってきます。ただ、ノイズというべき音ではなくインフォメーションというべき性質の音であり、不快なノイズを聞かされることによる疲労蓄積はありません。ハンズフリーで通話している時、通話相手から“ウインカーの音が聞こえる”と言われるほどの静粛性です。正直、乗り始めの時期は自分の聴力低下を疑いました。踏切の警音器、緊急車両のサイレンが相当小さく聞こえ、140特有の二重ガラスの効果を実感したものです。

 

車体剛性について言えば、軍用車?と言いたくなるほどです。国産車ではミシミシ言うようなクルマにとっては拷問でしかない角度の坂道を上り下りした際も“悲鳴”をあげませんでした。恥ずかしながら、乗り始めの時期はあちこちを擦ったため鈑金屋の世話になりましたが、鈑金屋曰く“鉄板が厚い”ので鈑金は苦労するそうです。特にフロントフェンダーの鉄板の厚みが厚いらしく、相当苦労した旨を聞かされました。

 

今のところ人生初の“マイカー”ですが、実のところ140に乗るまで左ハンドルの運転経験はありませんでした。全長5.2m、全幅約1.9mの巨体ですので日本国内、特に都心部での取り回しを懸念していましたが、それは杞憂に終わりました。140などはクルマに詳しくない人をして“小回りが利く”と言われるクルマの代表格であり、実際に入れる?というほど狭い道でもズイズイ入っていけます。国産車だと切り返さないと入れないような道であっても、切り返しなしで進入できます。

加えて、ステアリングとタイヤ以外の曲線が乏しい直線基調の車体は、前後左右の車体感覚を非常に把握しやすく、乗り始めて4年経過した現在ではすっかりと140の車体感覚が身体に染みこんでいます。

 

 

Q2. このおクルマ、この年代のクルマの魅力とはなんでしょうか?
 

140というクルマは現行型のSと比較すると、明らかに時代遅れです。今なお一部箇所で西ドイツ製の部品が装着され、それが現役として作動しているくらいです(笑)

しかし、ネオクラシック・メルセデスの魅力に現行型は全く影響しません。基本設計はほぼ1980年代と、約40年近く前に設計・開発された140ですが、現代にあっても通用するクルマなのは確かです。

 

国産車で空力作用が生かされたデザインが採用され始めたのは21世紀に入ってからですが、約40年近く前に 設計・開発された140では既に空力作用を取り入れています。例えば、ボンネット先端に屹立するオーナメント。何も知らない人は単なる飾りと見ていますが、このオーナメントこそ空力作用を生み出しています。ボンネット先端中央に位置することでオーナメントが風を“切り開く”ような形となり、フロントウィンドウの汚れを低減する効果があります。また、ボンネット先端中央に位置しているため、車体の先端を運転者に把握させる機能もあります。

 

他にはサイドウィンドウとドアサッシュの段差をほぼ皆無とすることで空気抵抗を低減するようになっています。コンビランプは雪や泥が付着した場合であっても、被視認性を高めるための凹凸がつけられていることは有名でしょう。

 

このように、ネオクラシック・メルセデスは装備に見えない装備にも機能が付与されており、140のようなクルマを作り出したダイムラーベンツ社には敬意すら覚えます。140の開発費は登場当時で約80億西ドイツマルク、日本円にして約2,700億円と言われており、140に影響を与えたことで有名な初代セルシオさえ約750憶円であることを考えると、140というクルマが駄作のはずありません。

 

ネオクラシック・メルセデス世代まではネジ一本に至るまで刻印があったと言われ、高品質な部品が採用されていることを体感しています。ドアの重厚感溢れる金属質な開閉音は前述しましたが、ロッキングアイ一つとっても非常に強固な印象を受ける部品が採用されています。

シートの秀逸さも前述しましたが、この秀逸なシートにしても非常にコストがかけられているらしく、この世代のシートの設計・開発費でクラウンが開発できると言われるほどです。

 

あと、電子制御が限定的なところも良いですね。

140はCANと言われるシステムを採用し、テスターを接続してクルマを管理するという点で世界初ですが、CANで管理されるのはエンジン、変速機及びエアコンくらいです。つまり、それ以外の部分はアナログなため、乗り手が機械を操るという要素が残されており、巷で言われる“メルセデスはBMWと比べ運転が退屈”ということはありません。大型オーナーズセダンとしては十分に運転を楽しめるレベルです。

全てにおいてふんだんにコストがかけられた140、このようなクルマはもはや世に出てこないでしょう。

 

 

Q3. 所有されてから苦労されたことはありますか?
 

ズバリ、駐車場と整備工場ですね。

 

前者は巨体ゆえに駐車を拒否されることが多く、何とか契約できたとしても周囲の駐車車両の所有者から苦情が出たことで契約を解除されて追い出されたこともあります(笑)

 

後者については、140というクルマの特殊性ですね。ネオクラシック・メルセデスは“分解修理“できることがアッセンブリー交換を普通とする今時のクルマとの相違点であり、本来であればどこの整備工場でも問題ありません。しかしそこは140、コストがかけられているだけに内装一つとっても分解に時間を要するクルマなのです。

 

加えて、世界的に少ないV12エンジンを搭載し、リアサスペンションがマルチリンク式、電子制御と機械が半々というようなクルマです。140が現行型であった時代に140を触っていた熟練整備士は少なく、140を知り尽くしている整備士は非常に稀少です。潤沢にコストがかけられているのは良いことですが、整備という観点では相応の技術力と経験が求められるようです。

 

電子制御の部分はテスターを接続すれば判るかもしれませんが、機械の部分は豊富な経験と確実な技術がなければ直すことができません。こういった理由から、お世話になる“ドック”探しが苦労します。

 

 

Q4. おクルマの維持にはどのようなことに気を使われていますか?
 

綺麗好きな性格ゆえか、汚れたら速やかに綺麗にしているので洗車は不定期です。

世の中にはハマーやディフェンダーのように薄汚れた状態で乗ることが格好良いクルマもあります。しかし、140のようなクルマは常に綺麗に保つのが当然ではないでしょうか。汚くて旧いクルマと旧いけど綺麗なクルマ、クルマ好きならば後者を見て“好きで乗っているんだな”と思うでしょう。前者は“買い換えたくても買えないのだろう”と思われるでしょうが(笑)

 

自分で言うのも変ですが、几帳面な性格のせいか綺麗にしていないと気が済まないというのもあります。140という車齢20年超のクルマを乗る上では“心がけ”は欠かせません。例としては…

 

1.1日で最初の乗り始めは暖機運転、1日の乗り終わり後はボンネットを開けての廃熱放出

2.走行中は“急”の付く動作はしない

3.据え切りはパワステポンプへの拷問に他ならないので、必ずクルマを動かしながらステアリングを切る

4.変速機の前後進切替時は一旦Nに入れて、中立になったことを確認してから切り替える

5.冷却水及び油脂類の使用期限厳守

 

といったことが代表例です。他にも数多くありますが、本人にとっての習慣なので違和感を覚えませんが、傍で見てる人から不審な目で見られます。特に1番の後者は(笑)

 

電子制御の部分はテスターを接続しないとわかりませんが、機械の部分は4年乗っていれば“調子”の善し悪しがわかってきます。怪しいと思ったら整備士に相談、要すれば点検をお願いしています。

 

ネオクラシック・メルセデス世代共通の“予防整備”を怠らないことは言うまでもありません。

 

意外と?重要なのが同型車オーナーとの情報交換です。私より140歴が長い方々の意見や経験は若輩者の私にとって非常に貴重です。何より“同志”が日本各地にいるという事実は、140というクルマが未だに“愛されている”証拠ではないでしょうか。

 

“良いものは長く持つ”とよく言ったものですが、製造終了から20年は経過する140は本当に長く持ちますし、持ちそうです。本国ドイツでは、メルセデスは世代を超えて乗り続けることもあるそうです。

 

乗り始めて4年も経つと140が“クルマ”の基準となってしまい、乗り換えるクルマが見つかりませんし、電子制御尽くしの今時のクルマはすぐに飽きてしまいます。その点、140は電子制御と機械の半々だけに、飽きずにいつまでも乗れますね。

 

絶対的な燃費の悪さ(意外にも、600より小排気量の国産車より燃費は良いです。)や多いであろう二酸化炭素排出量等、環境面では褒められない140ではありますが、一つの物を末永く使うのは日本古来の文化にも則しているのではないかと考えています。

 

 

Q5. いつもご入庫ありがとうございます。山内ガレージにご入庫いただいたきっかけは何ですか?
 

現勤務地の長崎県にやってきたのが2年前で、140の維持整備という点ではゼロスタートでした。そこでまずはグーグル先生に尋ねてみたところ、御社に行き着いたのです(笑)

 

最初の訪問時、工場長にご対応いただきましたが、工場長の一言で御社に託する気になりました。工場長の“ (今でも若いようにお見受けしますが) 若い頃に140で鍛えられました”という謙虚なお言葉は今でも覚えています。あのお言葉を聞いた瞬間、この人なら140の相手をできるだろうと安心しました。

 

昨年秋、車検のついでにヘタっていた足回りを100万円かけてオーバーホールしました。ネオクラシック・メルセデス世代を知らない人は一様に“高っ!”と言いますが、この100万円コースに踏み切れたのは、工場長が笑顔で“10年ぶりですね”と仰っていたからです。

普通の整備では100万円もかけることないだけに、本当に100万円かければ良くなるのだろうかと疑うのが人間です。しかしそこは工場長、豊富な経験と確実な技術を元に助言をいただきました。

 

OEMでも問題ないところはOEM、先送りしても差し支えないところは先送り。といった具合に、車両の状態と予算を考えながらの助言でした。

オーバーホール前に“100万円かければほぼ一新できて、乗り心地は格段に良くなる。約10万キロは乗れる”と工場長が断言されたのを聞いて、100万円を投じる覚悟を決めました。

140を乗り回しているとは言え、技術や経験に乏しい整備工場(整備士)に100万円お支払いすることは無理ですから(笑)

 

オーバーホール後、乗り始めて500m程度走行したところで、工場長が同型車のナンバーを付け替えた別物とすり替えたのでは?と思うほど、劇的に乗り心地が向上しました。100万円かけて足回りをオーバーホールすれば乗り心地が蘇るのもメルセデスの良さですね。国産車では考えられませんから。

 

 

Q6. 当社の非分解エンジン洗浄をご利用いただいてありがとうございます。施工後におクルマに変化はありましたか?
 

まず、エンジンの吹け上がりが良くなりました。従来アクセルを踏み増ししなければ登り切らなかった上り勾配が、踏み増しせずとも登り切れるようになりましたから。

 

レスポンスも鋭くなりましたね。少し踏み増すとエンジンがスーッと回り、本調子のV12に戻った感じです。惰性で走る距離も増えました。

 

燃費については元々期待していませんが、街乗りでコンマ数キロ、高速走行では1km/L程度向上しました。一見大したことがないように思えますが、中・長距離ではそれが大きな差となります。“塵も積もれば山となる”とよく言いますが、長い目で見ると累計消費量が変わってきますよね。

 

非分解エンジン洗浄はフルコースで施工しましたが、費用が10万円を切ったことことから、友人等にも薦めています。フラッシングオイルでエンジンを洗浄するより、非分解エンジン洗浄の方が遥かに費用対効果が高いよ、と。

因みに、私の140は次回20万キロで再び施工しようかと考えています。

 

そう言えば、非分解エンジン洗浄にしても実際に施工できるところは必ずしも多くないですね。ディーラーでは当然対応していませんし、街中の整備工場でも施工可能な工場は多くないように見受けます。

その点、御社では二千台の実績があることから、非分解エンジン洗浄も安心してお願いできますね。

 

貴重なお話ありがとうございました。
 
-2018.03.24

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